リーゼントは、日本の不良文化を象徴する髪型として、昭和から現代にかけて独自の進化を遂げてきた。この記事では、リーゼントの由来や時代背景を掘り下げつつ、基本的な作り方と現代における意味について丁寧に紹介する。
由来と語源
リーゼントのルーツは、イギリスのリージェント・ストリート周辺で流行した「リージェンシースタイル」にあるとされる。欧米では1950年代、ロカビリー文化とともにリーゼントが流行。エルヴィス・プレスリーをはじめとするミュージシャンたちがこの髪型を取り入れたことで、一気に若者たちの間で広まっていった。日本には昭和30年代ごろ、ロックンロールとともにそのスタイルが持ち込まれ、不良少年たちの間で“気合いの入った男の髪型”として定着していく。
日本独自の進化と不良文化への定着
日本では1970〜80年代にかけて、リーゼントは単なるファッションを超えた「文化」としての地位を確立した。特に映画『ビー・バップ・ハイスクール』や『クローズ』などの影響により、不良少年のイメージとしてリーゼントが完全に定着。喧嘩に強い、筋を通す、仲間思い──そんな“昭和の男”を象徴する髪型として、ツッパリや暴走族、応援団文化とも深く結びついていった。
また、学校では校則との戦いのなかでリーゼントを通じて反骨精神を表現する者も多く、髪型そのものが個人の意志を反映する象徴的な存在となった。とりわけ高さのあるリーゼントや横に大きく張り出す“クジラ型”は、他の生徒との差別化や、派閥の象徴としても用いられたという記録も残っている。
基本的な作り方と整髪料
リーゼントをセットする際に欠かせないのが、ポマードまたはグリース系の整髪料である。まず髪を根元から濡らし、ドライヤーで前髪を立ち上げながら形を整える。次にポマードを手に取り、髪全体に均等になじませたうえで、コーム(くし)を使って流すように整えるのが基本だ。
側頭部と後頭部はタイトに抑え、前髪から頭頂部にかけて“山”を作るように立ち上げていく。このとき、左右のバランスやカーブの角度にも個性が出るため、単なる模倣ではなく“自分流”のリーゼントを追求する者も少なくない。仕上げにハードスプレーで固定すれば、型崩れしにくい硬派なスタイルの完成である。
現代におけるリーゼントの意義
現代においてリーゼントは、かつてのような日常的な髪型ではなくなった。しかし応援団や祭り、旧車イベントなど特定のコミュニティでは今なお現役であり、ひとつの“美学”として生き続けている。また、レトロファッションの一部として若い世代がリーゼントを再評価する動きもあり、SNSを通じて発信されるケースも見られるようになった。
加えて、リーゼントは“昭和の不良”を演出する上で欠かせないパーツであり、舞台や映像作品、アーティストのビジュアルづくりなどでも需要がある。整髪料メーカーもリーゼント向けの専用アイテムを展開しており、その文化的価値は今なお継承されているのである。